『未来シナリオ創造プログラム』参加者募集中、「マノスフィア」、ほか
Topics
8月に実施する『未来シナリオ創造プログラム』参加者募集中です。
7月16日 『地球視点で未来をデザインする「日本らしい」共創と変革 —経営とアカデミアによる実務と最先端理論の融合—』
Update
こんにちは、山内です。
ポッドキャスト『敗者のつぶやき』で「マノスフィア(manosphere)」について説明しました。京都クリエイティブ・アッサンブラージュでは、最先端の文化を読み解くのですが、時折いくつか事例を取り挙げて説明しています。マノスフィアとは、英語圏で若い男性を中心に広がっている、女性蔑視、女性嫌いを伴う、男らしくあることを目指すイデオロギーです。
ルイ・セローのNetflixドキュメンタリー「ルイ・セロー “マノスフィア”の深層にあるもの」が話題になりました。
現在2026年にアメリカでは中間選挙を控えて政治が動いていますが、マノスフィアはトランプサポーターの一角をなしています。米国では次々とリベラル左派の躍進が続いていますが、だからと言ってマノスフィアが弱くなっているわけではありません。その背景を理解しつつ、今後の社会の方向性を見極めることは重要となっています。
男性には価値がない、というところから始まります。女性は誰かが助けてくれるが、男性は誰も助けてくれない。既存の社会のシステムは女性に価値を与えるように作られていると言います。そのシステムの外に出ようというものです。女性は男性に比べて能力がない、女性は男性の言うことを聞くべきだというような極端な主張を繰り返すことになります。
これをレッドピルと言います。映画『マトリックス』でモーフィアスが赤い薬か青い薬のどちらを選択するのかと迫ったことに因んでいます。赤を選ぶと、システムの外に出られます。私も、システムの解体を欲望するというメカニズムを説明するために、レッドピルをよく使いますが、マノスフィアでは、むしろ伝統的な男性優位のシステムに回帰することを目指すので、むしろブルーピルと言うべきでしょう。
マノスフィアも一枚岩ではありません。アンドリュー・テートなどに代表される、男性性を強調し女性にもてることを自慢するインフルエンサーもいれば、童貞であることを売りにしている、白人至上主義・反ユダヤ主義のニック・フエンテスのような方々もいます。また、容姿にこだわり整形や薬によって過激に顔を作っていくLooksmaxxerのような人もマノスフィアの一角を占めます。若い男の子たちが夢中になっている、Clavicularという若いインフルエンサーは、ハンマーで骨をくだいて顎の骨格を作り直す(bonesmashing)ことを広めています。
マノスフィアのインフルエンサーは、ソーシャルメディアで注目を集めるために、過激な発言や行動を見せつけます。例えば、女性蔑視だけではなく、反ユダヤ主義の発言を繰り返します。それによって、ソーシャルメディア上でファンを増やすことで稼ぎ、さらに特別な情報を与えてやると言ってテレグラムに誘導し、そこであやしいサービスを購入させるという仕組みです。
インフルエンサーはそのように荒稼ぎしながら、システムの中に留まって従順に生きている人々を馬鹿にします。自分はこれだけ稼いでいるんだから、お前たちもやれと。そうやって、さらに利益を絞り取っていくのです。このように仕組まれたメカニズムによって、より過激なメッセージが拡散していきます。
ソーシャルメディアのプラットフォームもそれによって利益を上げることになります。多くのインフルエンサーは、メジャーなプラットフォームからはBAN(出入り禁止)され、新興のプラットフォームに逃げていますが、2024年のトランプ大統領の再当選以降、大手プラットフォームが検閲の手を緩めたことも、この「利益」に関係しています。ブレーキを失ったことで、かつてはネットの片隅に隔離されていたマノスフィアの思想が、今や少年たちのスマートフォンの画面を席巻しているのです。
ここまではある程度語られていることです。問題は私たちです。私たちリベラル側の人間は、これらの人々を批判し、あるいは異様な人々として馬鹿にしつつ恐れています。私は、この問題にリベラルな自分にも責任があるということに向き合うことが重要だと思います。2010年代の文化が限界を迎え、新しい時代に入りましたが、2010年代のリベラルな言説を繰り返すことは問題をより悪化させていきます。
どういうことでしょうか? 2010年代にはポリティカル・コレクトネスが盛り上がりましたが、端的に正しいことをするということを直接主張し、そうではないものを批判していくという文化です。最近は、この文化自体がWokismとして批判されるようになりました。もちろん保守側の人達からの批判です。でもこの批判にも重要な点があります。
正しいことを掲げることは、たしかに完璧に正しいように見えます。そして、そのように批判すると、誰も言い返せません。問題は、このような批判を展開する人は、自分を絶対的に正しい位置に確保し、他の人を正しくないと言っているということです。正しいことをしようと言うとき、自分は正しい人間であること、相手は正しくないことを含意しています。
これが「美しい魂」の欺瞞なのです。自分は美しいと棚上げして、問題は向こう側にあるという枠組みです。これは近代の枠組みでもあります。つまり、人間を主体として打ち立て、向こう側に受動的な客体を置いたときに作り出した距離です。しかし自分を棚上げすることはできず、「あなたはどうか」と返されます。
このような自分と向こうとの距離を生み出していること自体が、近代が生み出してきた環境破壊、家父長制、格差、人種主義などの根底にある問題です。つまり正しいことを主張すること自体が、問題を繰り返しているのです。
マノスフィアが正しいということではありません。ここで言いたいのは、2024年以降の新しい時代において、私たちが乗り越えなければならない問題が、私たち自身にあるということです。今、生まれつつある新しい文化は、この問題を乗り越えようとしています。ここから新しいイノベーションが生まれてくるのです。
1. 『未来シナリオ創造プログラム』参加者募集中です。
企業の未来戦略・長期ビジョン策定に新しい視点を。LARP(ライブアクション・ロールプレイ)を用いて”ありうる未来”を当事者として体験する実践プログラムです。AI分析だけでは捉えきれない生活者のリアルな矛盾や葛藤を身体で理解し、多様な存在とともに意味を共創する手法を学びます。定員30名・締切7/27。
詳細はこちら: https://assemblage.kyoto/future-scenario/
申込はこちら: https://peatix.com/event/5057562
2. 地球視点で未来をデザインする「日本らしい」共創と変革 -経営とアカデミアによる実務と最先端理論の融合-
7/16(木)、大阪のQUINTBRIDGEにて、 書籍『クリティカル・ワードデザイン理論 問題解決と未来構想の先へ』の発行を機に、京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構 水野大二郎教授、ヤンマーブランドアセットデザイン株式会社代表取締役の長屋明浩氏、株式会社エンビジョンの執行役員 COO兼 CBO 藤巻功氏による対談を行います。
経営とアカデミアそれぞれの専門的視点から、「広義のデザイン」や「日本らしいブランドのつくり方」をテーマにお話しする予定です。対談終了後、簡単な交流会も開催予定です。皆さんのご来場をお待ちしています。
会場: QUINTBRIDGE(大阪・京橋)
イベント詳細:https://www.quintbridge.jp/event/detail/202605271644.html?date=2026/07/16
参加お申込みはこちら:https://peatix.com/event/5017114
ポッドキャスト「敗者のつぶやき」
ポッドキャスト「敗者のつぶやき」では、プログラムにも関連する人文社会学のトピックを毎回議論しています。
Apple Podcasts / Spotify Podcasts
ご感想、疑問点、扱って欲しいテーマ等を、Xで募集しています。敗者のつぶやき公式アカウントをフォローの上、#敗者のつぶやき をつけてポストをお願いします。
敗者のつぶやき 公式X https://x.com/haisha_podcast

