『Tim Brownと考えるデザイン思考前史と後史』の解説 (2/3)、『起こりうる未来を”生きる”ためのデザイン』ほか
Topics
7月5日 『起こりうる未来を”生きる”ためのデザイン —Designing Futures through Speculation』
7月16日 『地球視点で未来をデザインする「日本らしい」共創と変革 —経営とアカデミアによる実務と最先端理論の融合—』
Update
こんにちは、山内です。
前号に引続き、5月26日に実施した『Tim Brownと考えるデザイン思考前史と後史: AI時代のデザインと経営を考えるために』の解説をしていきたいと思います。
詳しくは、ポッドキャストでも説明しています。
#76 デザイン思考 前史と後史 (Apple / Spotify)
前回のニュースレターでは、1991年のIDEOにおけるデザインの革新を、イギリスのデザインの歴史に基づくインタラクションデザインとカリフォルニアのカウンターカルチャーの歴史に基づくプロトタイピングの化学反応として説明しました。
その後、1999年にテレビ(ABC Nightline)でIDEOがセンセーショナルに紹介されたときには、まだデザイン思考ではありませんでした。ショッピングカートを作るという伝統的なデザインでした。そこから全てのビジネスにとって必要な「思考」となるためには、2000年にCEOになったTimさんの苦労がありました。
TimさんがCEOになった直後に、シリコンバレーでは「ドットコムバブル」が弾けます。ビジネスの半分以上がふっとんだと言います。CEOになった直後に人員整理をしなければならないという、もっともツラい仕事をすることになります。ここでTimさんが、IDEOの次を真剣に考えざるを得なくなりました。結果的に、Timさんは、以前のようなデザインに戻ってもIDEOに将来はないと見極めます。
Timさんはドットコムバブルはきっかけにすぎないと考えました。アメリカの製造業はほとんどが中国に行くだろう、経済が戻ってもこれまでのデザインではビジネスが先細るだけであると。そこでデザインの上流の「ビジネス」に行かなければならないと考えたのです。それまでのようにクライアントのデザイン部門と仕事するのではなく、経営者と仕事をしなければならないと。1980年代からモノのデザインを乗り越えようとしたインタラクションデザインで仕事をしていたTimさんは、2000年に入ったときの社会の変化をよく見ていたのです。
しかし、ビジネスがわかる人を雇おうとして何度も失敗してきたと言います。ビジネスとデザインは「水と油」の関係と表現されました。分析的なビジネスと発見型のデザインは相容れないのです。3度目のトライで、もともとIDEOでデザイナーをしていた方で、その後ハーバードビジネススクールでMBAを取得した人を雇い入れたことで、ようやく成功しました。ビジネスの領域でも、デザインのアプローチを持ち込み、実践することができるようになりました。
そう聞くと、そんなこともはや当たり前だと思われるかもしれません。それが当たり前に聞こえるのは、まさにTimさんがリードを取ってデザイン思考を企業に浸透させてきた結果です。しかしながら、実はデザイン思考は、企業の現場ではかなり浸透しましたが、経営層においては十分に成功していないのです。デザインの重要性は経営層に理解されているかもしれませんが、経営自体をデザイン的にやるということには至っていないのです。もちろん一部の先進的な経営者はいますが。
しかしながら、このAIの出現もあって混沌として変化の読めない状況において、まさにデザインのアプローチで経営をすることが必要となっています。もはや経営者が問題を分析した上で、正解に基づいて意思決定していくということは不可能です。とりあえずプロトタイプとしてやってみて、問題を理解し再構成していくことが必要です。経営者は判断する前に、世界に出ていって自分の前提を切り崩すきっかけを求め、そして何かを作って介入してみて、また前提を切り崩していくというサイクルをかなりのスピードで回していかなければなりません(2025年12月『一橋ビジネスレビュー』で、鉄川弘樹さん、高田直樹さんと一緒に、「経営=研究」であるというテーゼを発表したのは、同じ考えです)。
ENND Partnersは、岩渕さんとTimさんが作った会社です。私は、デザイナーのTimさんと、戦略コンサルタントの岩渕さんがタッグを組み、デザインをさらに経営にまで高めて行こうとしているだと理解しました。デザイン思考の残された仕事として、これはどうしても必要ですが、簡単なことではないと思います。
私たち京都クリエイティブ・アッサンブラージュが、岩渕さんやTimさんと連携して議論させていただく意味は、この新しい時代のデザインを探求することだと考えています。デザイン思考という言葉を考えたのは、スタンフォード大学のd.schoolです。d.schoolは、David Kelleyさんが中心になって立ち上げたこともあり、IDEOの多くの方が教えていました。私たち京都クリエイティブ・アッサンブラージュも大学という立場で、一緒に探求していくパートナーになれればと考えています (そのように大学というオープン場を使い一緒に考えていく企業パートナー募集中です!)。
そのために、ひとつの重要な直感があるように思います。それは、「なぜTimさんは今になって日本でやるのか」ということに関連します。(次号につづく)
参考:『Tim Brownと考えるデザイン思考前史と後史』の解説 1/3 (Newsletter 前号)
参考: 次号はこちら。
1. 起こりうる未来を”生きる”ためのデザイン —Designing Futures through Speculation
8月開講予定の「未来シナリオ創造プログラム」に先立ち、プレイベントを開催します。
『認知症世界の歩き方』で知られる 筧裕介氏と、京都工芸繊維大学の 水野大二郎教授による対談を実施。コ・デザインやスペキュラティブデザインなどを手がかりに、今・ここにない世界観や自分とは異なる価値観、他者の視点を生きるアプローチを探ります。単一の価値観や未来像を前提とせず、多様な未来を経験することで広がるデザインと価値創造の可能性について考えます。
後半には、KCA修了生によるライトニングトークに加え、「未来シナリオ創造プログラム」のご案内、懇親会も予定しています。プログラムの受講を検討されている方はもちろん、テーマに関心のある方にとって、講師や修了生の考え方や実践に触れられる貴重な機会です。ぜひお気軽にお申込みください。
日時:2026/7/5(日)16:00〜19:30(懇親会 18:30〜)
会場:FabCafe Tokyo (〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1丁目22−7 道玄坂ピア 1F)
形式:現地定員30名(オンライン同時配信なし/アーカイブ配信あり)
申込:https://peatix.com/event/5048024
2. 地球視点で未来をデザインする「日本らしい」共創と変革 -経営とアカデミアによる実務と最先端理論の融合-
7/16(木)、大阪のQUINTBRIDGEにて、 ヤンマーブランドアセットデザイン株式会社代表取締役の長屋明浩氏、株式会社エンビジョンの執行役員 COO兼 CBO 藤巻功氏と対談を行います。
経営とアカデミアそれぞれの専門的視点から、「広義のデザイン」や「日本らしいブランドのつくり方」をテーマにお話しする予定です。対談終了後、簡単な交流会も開催予定です。皆さんのご来場をお待ちしています。
会場: QUINTBRIDGE(大阪市都島区)
イベント詳細:
https://www.quintbridge.jp/event/detail/202605271644.html?date=2026/07/16
参加お申込みはこちら:
https://peatix.com/event/5017114
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