『Tim Brownと考えるデザイン思考前史と後史』の解説、ほか
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7月16日 地球視点で未来をデザインする「日本らしい」共創と変革 —経営とアカデミアによる実務と最先端理論の融合—
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こんにちは、山内です。
5月26日に『Tim Brownと考えるデザイン思考前史と後史: AI時代のデザインと経営を考えるために』を実施しました。デザイン思考をもう一度振り返り、そこから次を考えようという企画です。
今回は自分の考えではなく、Timさんの考えを引き出すというファシリテーションを行う役割だったのですが、そういうのは苦手で、伝えるべきことの半分も伝わっていないという反省の多いイベントとなりました。そこで、ポッドキャストで内容を全て解説しました。
#76 デザイン思考 前史と後史 (Apple / Spotify)
なぜ歴史にこだわったのか? Timさんと話をすると、19世紀の歴史から始まりました。私自身は10年ほど前から、デザイン思考には歴史がないということを批判してきたので、考えさせられました。もちろん方法論としては、歴史を語れない枠組みになっているという問題はあります。つまり、ひとつのアイデアがあっても、なぜ今それが重要なのかが説明できないという問題です。むしろ過去を忘れて、自由に発想しようというわけです。しかし、イノベーションは個々のアイデアではなく、歴史の流れにとって必然性が必要なのです。
Timさんは、デザインを歴史の流れの中で捉えています。「常に次のデザインは何か?」と問い続けているのです。そこで、デザイン思考のポイントは、むしろデザイン思考をどうデザインしたのか、そして、20年経って今どういうデザインをデザインするのかを議論しなければならないということです。
そして、この次のデザイン、つまりAI時代のデザインについてはまだ答えがない状態です。今回の主旨は、それを一緒に作り上げましょうという立ち上げの意味がありました。そのためには、今という時代をよく見て理解しなければなりません。そして、デザインをデザインすることの意味を理解しなければなりません。AIにできないことをしようというような結論では意味がありません。
Timさんがおっしゃったのは、デザインとは技術の変化によって社会が変化し、人間が疎外される状況に対する「応答」であるということです。だから、19世紀に産業革命が先行したイギリスにおいて、アーツ・アンド・クラフツ運動などが出てきた歴史の話しになるのです(Timさんはイギリス出身です)。そして、この応答は、技術を否定してノスタルジーに引き込もるのではなく、技術を乗り越えた後の社会の姿を示すという「前向き」でもあります。
1920年代のモダンデザインを考えてみるとわかりやすいと思います。第一次世界大戦で技術によって破壊され、混沌とした激動の時代に、技術を否定して職人的な仕事に戻るのではなく、むしろ技術による生産だからこそできる新しい美の基準を作り上げ、モダンデザインという形で社会のあり方を示したのです。AIにはできない領域に退避して仕事をするというのではなく、次の社会のあり方を作るということです。
IDEOの前身でTimさんが活躍したID Twoという会社では、Bill Moggridgeという伝説的なデザイナーが、ソフトウェアを中心にした「インタラクションデザイン」を進めました。Billさんは、現在のノートパソコンのパカっと開ける形を思いついたデザイナーですが、新しく、美しく、機能するモノのデザインから、ソフトウェア中心のインタラクションのデザインへと移行しました。そう言えば簡単ですが、自分が学んできて成功してきたモノのデザインを否定するということは、大きな歴史の中断(宙吊り)があったということです。そこから心理学などを取り込み、人間中心設計が生まれてきました。
そして、ID Twoは、1991年にDavid Kelley Designと合併して、IDEOとなります。メカニカル(機構)デザインを専門としたDKDは、プロトタイピングという考え方を推し進めました。つまり考える前にモノを作り、作ることで問題を理解していくというアプローチです。これとインタラクションデザイン・人間中心設計とプロトタイピングという流れが合流し、「化学反応」したことで、IDEOのデザイン思考の原型が生まれたと、Timさんは語ります。
ここでTimさんが用いた「化学反応」という言葉が重要です。機構のデザインではプロトタイピングはわかりやすいのですが、それをインタラクションのデザインに取り込むということは、プロトタイピングという考え方をより抽象化し、仕事のやり方全体に昇華することが必要です。つまり、デザイン思考が、「思考」になるきっかけが生まれたということです。
ちなみに、プロトタイピングは、1960年代に盛り上がったカウンターカルチャーの文化です。現在のコンピュータの技術の基礎はカウンターカルチャーから生まれました(Xerox PARCやAppleは典型です)。スタンフォードの機械工学も、その文化の影響を大きく受けていました。化学反応というのは、単に方法論を組み合わせる、アイデアを融合するということでは生まれません。イギリスの19世紀からの歴史の流れとカウンターカルチャーという別の歴史の流れがぶつかり合い、別の何かに生成変化したということです。次のデザインにとっては、どういう化学反応が必要なのか、どういう歴史がぶつかり合うのかがポイントです。
そして、最後に、デザイン思考という言葉が2005年ぐらいに生み出され、方法論としてパッケージ化していくには、もうひとつの化学反応が必要でした。 (次号につづく)
参考: 次号はこちら。
1. 地球視点で未来をデザインする「日本らしい」共創と変革 -経営とアカデミアによる実務と最先端理論の融合-
7/16(木)、大阪のQUINTBRIDGEにて、 ヤンマーブランドアセットデザイン株式会社代表取締役の長屋明浩氏、株式会社エンビジョンの執行役員 COO兼 CBO 藤巻功氏と対談を行います。
経営とアカデミアそれぞれの専門的視点から、「広義のデザイン」や「日本らしいブランドのつくり方」をテーマにお話しする予定です。対談終了後、簡単な交流会も開催予定です。皆さんのご来場をお待ちしています。
会場: QUINTBRIDGE(大阪市都島区)
イベント詳細:
https://www.quintbridge.jp/event/detail/202605271644.html?date=2026/07/16
参加お申込みはこちら:
https://peatix.com/event/5017114
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